※6/9 データ更新(中国地方の減収率(4月)を反映)
4月30日に日本モビリティ・マネジメント会議(JCOMM)から,「コロナ禍による公共交通の推計減収額は最低3.5兆円」と報告書を発表しましたが,本日5月26日付で,「中国5県の推計値」を公表しました.
■新聞記事
中国新聞:5/28「公共交通585億円超減収 中国地方のコロナ影響、呉高専教授ら試算」
このレポートは,
・広島大学大学院先進理工系科学研究科・藤原 章正 教授
・山口大学大学院創成科学研究科・鈴木 春菜 准教授
との共著で発行しています.
2名の先生方との共通点は,「交通」を専門とし,日本モビリティ・マネジメント会議実行委員会のメンバーで,中国地方の研究機関に所属している,というところ.
これまで,地域の公共交通は地域で支え続けてきられてきました.今後の地域の公共交通を守るため,「地域単位としての,県単位での議論」が進めば,ということを期待し,このレポートをまとめていきました.
今,公共交通事業者がピンチです.
特に考えていただきたいことは,
・「公共交通」の”公共”とは,一体どういう意味なのか?
・最近の公共交通が置かれていた環境はどうであったのか?
・その上で,今,公共交通に対し,何をすべきなのか?
の,3点.
1点目は,公共交通が「人々の日常生活や経済活動を支える基盤(インフラ)」であることです.電車や,バスや,タクシーや,船がもしなければどうなるでしょう?仕事にいけない,病院に行けない,といった生活上の問題に加え,外出しなくなり健康状態が悪くなる,その結果医療費が嵩む,といった,副次的な問題も発生します.しかもこの問題,1人ではどうしようもない.なのでみんなで考えないといけない.
なので,公共交通の運営に行政が深く関わるのです.民間の活力を使って,公共のサービスを運営している.なので「公共交通」なのです.
2点目は,最近は人口減少(特に少子化)や自動車の普及で,公共交通の利用者が長らく減少傾向にあったことに加え,最近では「運転手不足」が深刻です.このあたりはNHKの「路線バス 特設サイト」が詳しいので,ご覧ください.
実際に中国地方でも,営業成績はそこそこ良いが,運転手不足で運行を休止したバス路線が出てきています.
3点目は,ここが一番問いたい点.
方法は問いませんので,元々ピンチであった公共交通に,さらにピンチが襲ってきて危機的な状況にある.とにかく地域の公共交通を守るために,行政機関と地域の公共交通事業者としっかり議論して,連携して,どういう支援ができるのかを考えて欲しいのです.
悲しいことに,とある地域で「行政が公共交通の事業者を食わしている」とか「もともとが非効率なので,変革を促すチャンスだ」とか聞いたりしたことがあります.では,事業者が倒産して畳んでしまえば,あなたの組織で別の方法でサービスを確保できますか?実際に公共交通事業者が倒産してしまっています.
あと,最近特にあちこちで聞くのが,「いろいろな産業が厳しい中で,”公共交通”だけ特別扱いできない」という声.交通は血液みたいなものです.また,地域の公共交通は全国のほとんどの地域で,「地方自治体」が計画をもっています.ということは,「地方自治体」がマネジネントすべきなのです.
ドライバー不足の事態で,ドライバーが他業界へ流出も強く懸念されます.そのため「公共交通が運行できない,なので,バス路線の運行から撤退したい」というのも,今後十分に起こりうる話です.今対応しておかないと,今後長期に渡り,余計なコストを払い続けることとなる.そうならないように,今後の持続可能な公共交通サービス提供のために,市民の生活を守るために,今すべきことは何で,これくらいの規模のサポートが必要で,それを行政(地方自治体)と事業者と地域とよく話をして,ともに考えてほしい,そういう思いでまとめました.
ここの対応を誤ると,将来に亘り,大きなツケを払うこととなります.